景品表示法はセールの時も対象になる?事例や対策について解説

この記事は約10分で読めます。

生活に必要なモノの多くは販売されており、私たちは消費者としてそれらを購入して利用します。その価格や製品の情報は店舗で見たり、Webやチラシなどで確認するケースが多いです。多くの場合は、その価格などは誠実に表示されており、見間違いが起こらないよう対処されています。
しかし、まれに意図的に価格や性能などを偽り、金銭をだまし取ることを目的とするものがあるため、注意が必要です。

そして、意図していない場合でもこれらの「表示」において、価格や機能などを偽って販売を行うことは法的に禁じられています。その法律が景品表示法です。消費者としても騙されないよう注意するとともに、ビジネス上でこの法律に反した行いをしてしまわないよう注意を払う必要があります。

本記事では、この景品表示法について、概要を振り返り、違反が起こりやすいセール時の表示にフォーカスして紹介します。

また、LRMの「セキュリオ」のeラーニングでは、セキュリティ教材だけでなく、景品表示法をはじめとする様々な法令に関する教材をご用意しております。

教材一覧を無料公開していますので、ご覧ください。

景品表示法について振り返る

そもそも、景品表示法とはどのような法律なのか、振り返ります。

景品表示法の目的

景品表示法は、モノを買い消費する私たち消費者を「不当な表示」や「不当な景品」による被害から守る法律です。価値が低いものを表示により高く見せて販売する、機能や性能を偽って販売する、景品により射幸心をあおり物を販売するといった行為を禁止しています。

景品表示法の概要

景品表示法の正式な名称は「不当景品類及び不当表示防止法」です。昭和37年に定められ、以降改定が複数回行われており、近年では令和4年にも付則がつけられています。

景品表示法で禁止しているのは大きくは二つです。一つは、商品やサービスの品質、内容、価格などの不当な表示を禁止しています。そしてもうひとつは、過剰な景品の禁止です。

不当な表示の禁止

先にも記載した通り景品表示法は、商品・サービスの品質、内容、価格等の不当な表示を禁止しています。この不当な表示については、大きく三つの種類に分けられています。

優良誤認

品質や性能などについて誤認させる表示

有利誤認

価格やその他の取引の条件について誤認させる表示

その他

特定の業種、商品に関する表示規制6種類

ここで扱われる表示は物の販売に関わるあらゆる表示が対象となります。
具体的には、広告、ポスター、チラシ、カタログ、メニュー、商品の容器、パッケージ、ラベル、店の看板、店内陳列物、実演広告、その他の紙媒体への表示、テレビ・ラジオCM、ネット広告、メール、訪問販売のセールストークまでが含まれています。

過大な景品の表示

景品表示法のもう一つの大きな柱が、過剰な景品を禁止することです。

景品表示上の景品は大きく三つに分けられています。これらの景品について、それぞれ最大の金額が定められています。なお、四つ目の分類としてオープン懸賞が挙げられる場合がありますが、規制が撤廃されているため対象外となります。

一般懸賞・共同懸賞

懸賞とは、「くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供すること」をいいます。
複数の事業者による懸賞が共同懸賞、それ以外を一般懸賞といいます。

総付景品

懸賞によらない景品を総付(そうづけ)景品、ベタ付け景品と呼びます。来店しただけでもらえる景品や、一定数の先着順などで配る景品も総付景品に該当します。

景品表示法の罰則

景品表示法に違反した場合、行政による指導が行われます。

景品表示法への違反の疑いがある場合、消費者庁により資料の収集、事業者への事情聴取などの調査が行われます。調査により違反行為が認められた場合には、不当表示による誤認の排除や再発防止策の実施などの「措置命令」が取られます。また、課徴金の納付を命じる場合もあります。

景品表示法はセールの時に対象になるのか

景品表示法が実際にどのような場合に適用されるのか、具体的な例を見てみましょう。

物を販売する際に、期間や時間などの条件を設けて、普段の販売価格より安く販売するセールは身近なものです。このセールにおける表示でも、景品表示法は適用されており、違反となるケースがあります。

例えば、「セール前と比較して○○円安い!」という表示を行った場合、セール前に相当期間の販売実績がなければ景品表示法に違反しているとされます。

この、相当期間については、下記の条件にあてはまることが必要です。

  • 比較対照価格での販売合計期間が、セールの各時点からさかのぼって8週間(対象商品の販売期間が8週間未満の場合は当該販売期間)のうち半分以上を占めていること
  • 比較対照価格での販売期間が、通算2週間以上であること
  • 二重価格表示の開始日が、比較対照価格で販売された最後の日から2週間以上経過していないこと

景品表示法にセールの際に違反した事例

セールに関する表示において景品表示法に違反し、措置命令などの対処が行われた事例として下記が挙げられます。

スーパーで販売する食料品のチラシ

措置命令日 平成23年2月4日
対象商品
又は役務
スーパーで販売する食料品
表示媒体 チラシ
表示 実際の販売価格に「当店価格」と称する比較対照価格を併記することにより、あたかも、実際の販売価格が比較対照価格に比して安いかのように表示
実際 「当店価格」と称する比較対照価格は、実際に販売する予定の又は販売されていた対象商品の価格ではなかった。
違反法条 第5条(第4条第1項)第2号(有利誤認)

ウェブサイトでの「おせち」と称する加工食品の販売

措置命令日 平成23年2月22日
対象商品
又は役務
「おせち」と称する加工食品
表示媒体 ウェブサイト
表示 「キャビア」、「焼き蛤」等を「メニュー内容」として記載することにより、あたかも、対象商品に「メニュー内容」記載の食材が入っているかのように示す表示 「通常価格(税込)21,000 円 割引率 50%OFF 割引額 10,500 円」と、「割引額」と称する実際の販売価格に「通常価格」と称する比較対照価格を併記することにより、あたかも、実際の販売価格が比較対照価格に比して安いかのように表示
実際 キャビアではなくランプフィッシュの卵を入れるなど、対象商品に「メニュー内容」記載の食材とは異なるものを入れていた。また、焼き蛤は入れていなかった。 「通常価格」と称する比較対照価格は架空のものであった。
違反法条 第5条(第4条第1項)第2号(有利誤認) 第5条(第4条第1項)第2号(有利誤認)

販売する牛肉、豚肉及び鶏肉についてのチラシ、テレビコマーシャル

措置命令日 平成26年7月24日
対象商品
又は役務
牛肉、豚肉及び鶏肉
表示媒体 チラシテレビコマーシャル
表示 「毎月29日は肉の日!!」、「牛肉が半額! 当日表示価格より」等の映像及び音声を放送すること等により、あたかも、特定日の売出しにおいては、対象商品を通常時の販売価格の半額で販売するかのように表示
実際 特定日の売出しにおいて、対象商品の商品パッケージに記載した価格の多くは、通常時の販売価格が一旦引き上げられたものであって、通常時の販売価格の半額ではなかった。
違反法条 第5条(第4条第1項)第2号(有利誤認)

通信講座についてのウェブサイトでの表示

措置命令日 平成27年3月20日
対象商品
又は役務
通信講座に係る役務
表示媒体 ウェブサイト
表示 「資格取得!応援キャ ンペーン」「全講座、1万円割引実施中」、「期間限定2014年6月1日○日⇒6月30日○月まで」等と記載することにより、あたかも、当該期間内において対象役務の受講を申し込んだ場合に限り、正規受講料から1万円の値引きをするかのように表示
実際 平成22年5月から平成26年7月までの間ほとんどの期間において、正規受講料から1万円の値引きをするキャンペーンを実施していた。
違反法条 第5条(第4条第1項)第2号(有利誤認)
参考PDF

景品表示法についてのセール時の対策は

セールにおいて特別な価格を設定し広告などで表示する場合には、景品表示法に従った表示とする必要があります。この景品表示法に従った表示の際には、ガイドラインに従った記載をし、不当な表示に該当しないよう気を付けましょう。

以下、具体例を紹介します。

具体例

セール価格と「当店平常価格」などの併記をする場合

セール開始時からさかのぼって8週間のうち「当店通常価格」で販売されていた期間が4週間は必要とされます。また、「当店通常価格」で販売された最後の日から、2週間以上経過している場合は、「通常価格」「平常価格」といった表記は不当となります。

将来の予定価格の表示

製品やサービスの発売開始キャンペーンなどで将来の予定価格を表示する場合には、実際にその価格で将来的に販売することが必要となります。その価格で将来販売するか不確定の場合は、「予定価格」の表記は不当表示となります。

また、「実際に販売することのない価格であるとき」「短期間のみ当該価格で販売するにすぎないとき」は明確に景品表示法違反です。

セールの期間の延長

セール、キャンペーン期間の延長は、通常価格に実態がないと判断されるため、景品表示法の不当表示に抵触する行為となります。

割引期間に関しては明示する必要があり、過去の販売価格を表示する場合には最大4週間です。
将来の価格を表示する場合、期間は定められていませんが期間を明示することは必要です。

また、セールやキャンペーンが一度終了した後の再実施については、通常価格での販売期間を挟んで実施することが認められています。この場合は、過去の価格との比較のみとなり、将来の予定価格は表示できません。また、「今だけ」「一度切り」などの表記をセールで行った場合には、再実施は景品表示法に違反します。

タイムサービスでの価格の二重表示

特定の時間に実施するタイムサービスにおいて値下げ前の価格と値下げ後の価格を二重に表示することは、有利誤認にあたらず問題ないとされています。

景品表示法の詳細はガイドラインを確認

物の販売や広告などにより表示を行う際には、景品表示法に違反しないよう注意が必要です。
景品表示法の詳細については、ガイドラインで確認しましょう。

また、消費者庁の公開する「事例でわかる景品表示法 不当景品類 及び不当表示防止法ガイドブック」も分かりやすく参考となる資料です。

景品表示法について学ぶには?

景品表示法は、広告、看板、チラシ、ネット、店舗での表示などあらゆる場面で適用される場合があります。業務に関わる人が広く学習することが求められる法律です。

しかし、法律について集合型の研修やテキストの配布などの学習方法はハードルが高いものです。多くの人が自由な時間に気軽に学習できる方法としてeラーニングの活用が挙げられます。

LRMではeラーニング機能を含めたセキュリティ教育クラウド「セキュリオ」を提供しています。各種のセキュリティ対策に加えて、様々な法律に関わるeラーニングコンテンツを用意しております。管理者は学習状況を把握でき、教育に関する業務が効率化可能です。

まとめ

景品表示法は物の販売に関する表示と景品について、不当な表示や景品によって消費者が不利益を被らないよう定められた法律です。例えば、セールの場合に「普段よりXX円安い」とチラシに表示する場合には、普段にあたる一定期間の同商品の販売実績が必要となるため、ガイドラインにより確認を行いましょう。景品表示法についての、企業の従業員教育などではセキュリオなどのeラーニングの活用が非常に便利です。

情報セキュリティ対策法令・制度解説
タイトルとURLをコピーしました