企業での業務においてヒューマンリソースの補充方法の一つが派遣労働者を雇用することです。
業務の領域や内容によって変化はあるものの、どの様な仕事でも派遣労働者を活用するシーンはいつでも発生し得るものでしょう。
派遣労働に関して定める法律として労働者派遣法があり、これまで幾度も改正が行われてきました。企業においては、この法律に違反しないよう、あらゆる業務に携わる従業員および派遣労働者がその内容を理解しておく必要があります。
本記事では、労働者派遣法の概要、改正について、歴史やQ&Aについてご紹介します。
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労働者派遣法とは
通称「労働者派遣法」は正式名称「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」といいます。労働者派遣事業を適切に行い、派遣労働者の安全な労働環境を支えることを目的とする法律です。
安全で適性な労働環境は、派遣労働者にとってはモチベーション向上や安心感につながるものです。また、派遣労働者が最大限パフォーマンスを発揮して働けることで雇用する側にもメリットをもたらします。
労働者派遣法に違反した場合は、行政指導の対象となります。
派遣労働の雇用形態3種類
労働者派遣法の中には派遣労働の3種類の雇用形態が定められており、それぞれの形態に向けて詳細なルールが規程されています。
- 有期雇用派遣
- 無期雇用派遣
- 紹介予定派遣
有期雇用派遣は派遣労働を期間を区切った契約とする場合で、無期雇用は期間を区切らず派遣労働を行う契約です。また、紹介予定派遣は一定期間の派遣雇用後、派遣労働者を雇用主の企業に紹介し直接雇用を行う前提の派遣契約となります。
派遣労働において問題視される不正行為とは
派遣労働において問題視される不正行為として、二重派遣や偽装請負があげられます。
労働者派遣法や労働基準法、職業安定法などで禁止されており、派遣労働者側も雇う側も意識して避けなければなりません。
二重派遣
派遣元と雇用関係がある派遣労働者を、派遣先の企業が別の企業に向けて派遣する行為を指します。
二重派遣が禁止されている理由は、派遣労働者の労働条件が守られなくなることや、派遣労働者に対する責任の所在が曖昧になること、その結果として派遣労働者が不利益を被ることが問題視されているためです。
企業は二重派遣を実施しないことはもとより、受け入れた派遣従業員が二重派遣となっていた場合にもトラブルに繋がります。労働者派遣法とともに覚えておきたい知識の一つです。
偽装請負
派遣契約では、派遣労働者は指揮命令を受けて派遣先のために労働に従事します。労働の成果については、原則として責を負いません。
一方、業務請負(および業務委託、委任)契約の場合は成果物を完成させる責任を持ち、成果物の納品によって報酬が支払われるものです。派遣契約とは違い、労働者は契約先の指揮命令下にはありません。
偽装請負は、実質的には派遣契約にあたる労働者の派遣・供給であるにもかかわらず、請負や業務委託契約に偽装する行為を指します。
労働者派遣法の「無許可での派遣事業」、職業安定法の「労働者供給」、労働基準法の「中間搾取」などに抵触するため、偽装請負は禁止されています。派遣労働者を受け入れる場合には確認しておくべき内容となります。
改正労働者派遣法の改正内容
労働者派遣法は1986年の制定から、労働者の環境改善を求めて度々改正されています。本項では近年の改正である2020年、2021年の改正内容についてご紹介します。
2020年の改正(同一賃金同一労働)
同一労働同一賃金を掲げた改正です。派遣労働者の待遇について、派遣先の正社員と同じ労働をしているのであれば均等、均衡の待遇とするべきとし、改善を図る内容となっています。
派遣先企業の状況などを考慮し、下記のいずれかの方式をとることが定められました。
派遣先均等・均衡方式
派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇
労使協定方式
一定の要件を満たす労使協定による待遇
2021年の改正(派遣労働者に対する説明義務の強化)
派遣事業者の派遣労働者に対する説明義務が強化されました。派遣労働者が不合理な待遇差を感じる機会を無くすことを目的としています。
下記のタイミングでの説明義務が強化の対象とされています。
- 雇入れ時の説明
- 派遣時の説明
- 派遣労働者から求めがあった場合の説明
労働者派遣法の改正の歴史
労働者派遣法が制定されてから35年以上が経過しており、多くの改正が行われています。
その中でも、主だった改正は下記のとおりです。
1986年 労働者派遣法の制定
1996年 対象職種の拡大
1999年 対象職種の原則自由化、非対象職種はネガティブリストに。紹介予定派遣が登場
2004年 製造業への派遣を解禁。派遣の最大期間を1年から3年に拡大
2012年 日雇い派遣の原則禁止。規制強化
2015年 労働者保護のための改正
2020年 同一労働同一賃金
2021年 派遣労働者に対する説明義務の強化
今後も派遣労働者に向けてより良い労働環境を作るために、改正が行われることが想定されます。
改正労働者派遣法におけるQ&A
労働者派遣法の改正に関するQ&Aを下記に紹介します。なお、直近の改正を主な対象としています。
Q1.同一労働同一賃金とはどの様な意味なのでしょうか。
A1.正規社員と非正規雇用者の不合理な待遇差を解消することを目的としており、同一企業内の同一業務においては同一の賃金とすることを目指した取り組みです。
Q2.同一労働同一賃金はいつから適用されたのでしょうか。
A2.2020年4月1日より施行されています。
Q3.待遇とは給与のことでしょうか。
A3.給与や賞与などの賃金に限らず、教育や福利厚生も待遇に該当します。
Q4.実際に派遣先均等・均衡方式と労使協定方式のどちらが多く取られているのでしょうか。
A4.厚生労働省の調査によると労使協定方式が87.8%を占め、大多数となっています。
また、同一労働同一賃金の各方式についてのQ&Aが厚生労働省によってまとめられているため、こちらもご利用ください。
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まとめ
労働者派遣法は労働者派遣事業の適正化と、派遣労働者の安全な労働環境を確保するための法律です。2020年の同一労働同一賃金、2021年の派遣労働者に対する説明義務の強化など、度々改正が行われており、従業員や派遣社員への周知、教育が必要となります。eラーニングによるコンテンツ配信は、派遣社員に向けても配信できるため、労働者派遣法の教育に適した仕組みです。