サイバー保険の必要性とは?その補償内容や選ぶポイントも解説

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セキュリティ対策を十分に行っていても、サイバー攻撃による被害をゼロにすることは困難です。
万が一のサイバー攻撃で発生した金銭的損害を補償するものが、サイバー保険です。

この記事では、サイバー保険の必要性と補償内容、保険を選ぶときのポイントまで詳しく解説します。また、そうしたサイバー攻撃の対策として、まずは自社のセキュリティ状況と、取るべき対策の把握が不可欠です。

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サイバー保険についておさらい

サイバー保険とは、サイバー攻撃により発生した被害や、第三者への損害賠償責任などの補償を目的とした保険のことです。

企業にとって、サイバー攻撃は金銭的な被害だけでなく社会的な責任も脅かす重大な問題です。
最近では、取引先を装ってマルウェアを添付したメールを送信してくる標的型攻撃や、パソコンのデータを暗号化して身代金を要求するランサムウェアなど、サイバー攻撃の手法も多種多様化しています。

このようなサイバー攻撃を完全に防ぐ手立てはなく、もし攻撃に遭うと多額の損害が発生する可能性があります。そこで、そのようなサイバー攻撃に対する補償を目的とした、サイバー保険が誕生したわけです。

サイバー保険の必要性

もはやサイバー保険は、個人情報や機密情報などを取り扱っている全ての企業に必要な保険といえるでしょう。どんなに強固なセキュリティ対策を施していても、サイバー攻撃のリスクを完全にゼロにすることはできないからです。

しかしながら、サイバー保険が日本国内で誕生したのは2015年のことであり、保険としては比較的新しい商品と言えます。そのため企業における認知度も低く、実際に加入している企業もそれほど多くないのが現状です。

2022年現在では、新型コロナウイルスのまん延に伴い、多くの企業でテレワークやWeb会議が導入されました。しかしそれらのICTの利用は急速に進められたため、セキュリティ対策は十分とはいえません。

またサイバー攻撃の標的となる組織も、大企業だけでなく中小企業や公的機関なども含まれています。セキュリティ対策が不十分な組織の場合、システムの脆弱性が放置されていたり、スタッフの情報セキュリティ教育が不十分であったりすることも多く、サイバー攻撃による被害が発生しやすいともいえます。

マイナンバー制度の導入により、多くの企業でマイナンバーを管理する義務が生じており、万が一の流出への備えとしてもサイバー保険への加入を検討する必要もあるでしょう。

もしサイバー保険に加入していなかったら、発生した金銭的な損失を自社だけで負担しなければなりません。大企業ならともかく、経営資源の乏しい中小企業においては、企業存続の危機に直結することも考えられます。

セキュリティ対策やサイバー保険に加入していることは、取引先や顧客から自社が信頼されるための重要な要素になりつつあります。

このようにサイバー攻撃の脅威に対する備えとしてだけでなく、信頼される企業と認められるためにも、サイバー保険の必要性は高まってきているといえるのです。

サイバー保険の補償内容

サイバー保険の補償内容は保険会社によってさまざまですが、分類すると大きく以下の3つになります。

  • 損害賠償
  • 事故対応費用
  • 利益損害・営業継続費用

損害賠償

被保険者が法律上で負担する損害賠償金や訴訟費用などを補償します。海外における損害賠償金の補償については、保険会社のプランによって異なります。

事故対応費用

サイバー攻撃によって発生した事故対応の費用を補償します。具体的には、事故原因調査・コールセンター設置・記者会見・見舞金の支払い・法律相談・再発防止策の策定などです。
こちらも、海外における事故対応に必要となる費用は、保険会社のプランによって異なります。

利益損害・営業継続費用

サイバー攻撃によるネットワークやIT機器の機能停止で発生した利益損害・営業継続費用を補償します。営業が停止したことで発生した逸失利益が含まれます。

サイバー保険を選ぶときのポイント

多くの保険会社がサイバー保険を提供しているため、どこのサイバー保険を選べば良いのか迷うかもしれません。自社にとって必要なサイバー保険を選択するために、押さえておきたいポイントを紹介します。

補償内容をしっかり確認する

まずサイバー保険で補償される内容をしっかりと確認しましょう。サイバー攻撃の種類や自社の業務内容によって、サイバー攻撃で受ける経済的損失は異なります。

たとえば、マルウェアに感染したときのフォレンジック費用や、取引先へ支払う見舞金などは分かりやすい例ですが、自社のECサイトがサイバー攻撃で停止したときや、製造業における工場のライン停止したときの逸失利益がどの程度なのかも、しっかりと考慮する必要があります。

保険加入のタイミングを見極める

サイバー保険は、数ある保険の中でも比較的新しい商品であり、2022年現在でも保険自体も成長を続けています。特に、保険料や補償内容については、今後のサービスの充実化にともない変更される余地が十分に残されているといえるでしょう。サイバー攻撃自体の進化も、サイバー保険のサービス内容に今後も影響を与えると考えられます。

サイバー保険はサイバー攻撃への備えとしては有益ですが、自社に必要な補償内容が備わっていない商品を、すぐに導入すべきかどうかと言われたら、そのようなことはないでしょう。将来のサイバー保険のサービス内容の成長を見込みつつ、自社で行えるセキュリティリスクへの対応を充実させて、必要になったタイミングで保険に加入するのがサイバー保険をうまく活用するコツです。

保険の費用対効果を考慮する

サイバー保険にかかわらず保険に加入する時には、その費用対効果を十分に考慮しましょう。
サイバー保険はあくまでも、サイバー攻撃の被害に遭ってから効果を発揮する商品です。保険料よりも日々のセキュリティ対策にかける費用の方が少ない場合は、保険に入らないほうが費用は抑えられるはずです。

サイバー保険へ加入する前に、自社で行えるセキュリティ対策と保険料を天秤にかけて、十分な費用対効果が得られるか検討しましょう。

複数の保険会社を検討する

現在、サイバー保険を提供している保険会社は複数あります。保険会社によって補償内容や保険料などが異なるため、加入する前に比較検討して自社に相応しい保険を導入するようにしましょう。

サイバー攻撃への対策もしっかりと

サイバー保険に加入することで、サイバー攻撃の被害に遭った際の金銭的な補償が得られます。
しかしサイバー保険の対象となるサイバー攻撃や損害内容には限度があり、被害額の全てが補償されるとは限りません。サイバー保険の加入の有無にかかわらず、サイバー攻撃への対策もしっかりと行うべきです。

サイバー保険で解決できない問題もある

サイバー保険に加入しても、損害額と補償額が釣り合わないことや、リスクの高さのため保険の更新ができなくなるといった問題が発生する可能性もあります。このような問題も起こりえるため、セキュリティ対策ソフトの導入や、不正アクセスを防止するための認証の強化などのセキュリティ対策を十分に行う必要があります。

サイバー攻撃を未然に防ぐための対策

サイバー攻撃を未然に防ぐための対策には具体的に以下のようなものがあります。

  • セキュリティ対策ソフトの導入
  • ファイアウォールやIDS/IPSの導入
  • セキュリティの社員教育
  • ペネトレーションテスト/ネットワークフォレンジック

セキュリティ対策にはほかにも多くありますが、まずは自社にとって必要な対策を検討して、リスクの高いものから対策を取ることが重要です。

まとめ

サイバー攻撃は年々増加しており、攻撃内容も高度かつ複雑化しています。どのような企業であれ、サイバー攻撃に遭う確率をゼロにすることはできません。サイバー保険の加入はサイバー攻撃による金銭的な損害に対する補償として非常に効果的です。導入の際には保険会社の補償内容や保険料を比較検討して、自社にあった保険に加入することを心掛けましょう。
また、まずはインシデント発生時の自社内対応をしっかり固めましょう。

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