ライフイズテック株式会社様 – 顧客事例 –
中高生向けのプログラミング教育事業を展開するライフイズテック株式会社は、学校向けの新サービス『Life is Tech! Lesson』の本格展開を機にプライバシーマーク(以下、Pマーク)を取得しました。
ルールづくりにおいて意識したこととその成果、コンサルティングに携わったLRMが果たした役割について、取締役副社長COO小森 勇太氏、サービス開発本部 リーダー・浅倉正芳氏のお2人に話を伺いました。
記事index
(ライフイズテック株式会社について)
中学生と高校生を対象とした国内最大級、世界でも屈指の規模を誇るIT・プログラミング教育サービスを提供している。主要サービスは、夏・冬・春休みに短期集中型のキャンプ形式で開催する『LIFE IS TECH! Camp』と、毎週・隔週で学ぶ通学型スクール『LIFE IS TECH! School』。スマートフォンアプリやゲームの開発、デジタルツールを活用した音楽制作、映像制作、WEB制作の教育プログラムを提供している。100時間以上の教育を受けた大学生メンターが生徒をサポート。少人数制で生徒一人ひとりの性格や得意・不得意に応じた指導を行う。2018年にはオンラインで教育サービスを提供するための独自教材システム『MOZER』を開発し、ディズニー社とのコラボレーションによる『テクノロジア魔法学校』をリリースしている。現在、注力しているのは中学校、高校の情報の授業に向けたオンライン教材『Life is Tech! Lesson』だ。2025年に大学入学共通テストの出題教科に「情報」が加わることを受け、公教育の現場で教鞭を執る教師をサポートするため、生徒がプログラムを自学できる仕組みを提供。2019年のリリース以来、1,900校に導入され、現在は20万人以上の生徒が利用している。
本社;東京都港区。設立;2010年7月。従業員数;55名(2021年8月現在)。
LRMへのご依頼内容;Pマーク新規取得コンサルティング
— LRM株式会社へのご依頼内容をお話しください。
ライフイズテック株式会社は、2020年5月、LRMにPマークの新規取得コンサルティングを依頼しました。
担当者の三崎さん、宮崎さんと一緒に、ルール構築、文書作成などの準備を進め、2021年2月に審査機関による現地審査を受けて4月にPマークを取得しました。
厳格なルールのもと、100時間の研修を受けた大学生が中高生を指導
— Pマーク取得について伺う前に、御社の事業に関してお聞かせください。
2010年に事業を開始されていますが、中高生向けのプログラミング教育事業というのは珍しいように思います。約12年間、事業は順調に推移してきましたか。
設立当時はプログラミング教育という言葉も聞き慣れない言葉でしたし、特に中高生向けの市場はありませんでした。弊社は高校教諭を務めていた代表が、中高生の教育を目的としてスタートした会社です。創業事業としてデジタル領域を選択したのは、子供たちの可能性を伸ばすために何が良いのかを考えた結果、今の時代にはデジタルが合うと考えたからです。以来、我々はプログラミング教育の可能性を信じて、市場を作りながら、様々なチャレンジを続けてきました。
ようやく時代がマッチしてきた感覚を持っています。
— プログラミング教育といいますと、ブロックを使った小学生向けのロボット教材などは昔からありましたよね。
おっしゃるとおりです。小学生は習い事のカルチャーがありますので、比較的やりやすいところがありますが、中高生の場合、部活や学校の委員会、受験勉強などで時間を作りにくく、難しい面があります。
しかし本来、中高生は将来について考え始めなければいけないタイミングです。それにも関わらず、将来について考えるための情報が不足しています。彼らもテレビやインターネットを通じて、様々な職業の存在を知り、憧れを持つことがありますし、実際、そういった職業に就く可能性や選択肢はあるはずです。
そういった情報を届けるには、中高生に特化したサービスを作り、情報発信をしていく必要があると考えて事業をスタートしました。
— メインサービスの『LIFE IS TECH! Camp』や『LIFE IS TECH! School』では、中高生を指導するメンターに大学生を採用されているそうですが、その理由をお話しください。
我々の事業の目的は、中高生の可能性を広げることです。中高生の可能性とは何かといいますと、それぞれが持つクリエイティビティを発揮していくことです。そのクリエイティビティを引き出すことがメンターの役割ですが、その時に重要なのが年齢の近さです。教育の現場ではよく「斜めの関係」という表現が用いられます。
年齢が離れた高名なプログラマーから「君は何を作りたいのかね」と聞かれるより、同世代でカルチャー的な共通言語を持った人と会話をしながら一緒に作っていった方が、クリエイティビティは引き出されやすいです。
大学生を採用することが、非常に良い方法でした。
ただ、技術力や対話力など、非常に高いレベルが求められますので、弊社はメンターの大学生には、100時間かけて研修を実施しています。年齢が近いため、例えば異性間の問題など、様々なトラブルが発生することも視野に入れなければいけません。そのため厳格なルールを設け、徹底させています。参画してくれる大学生が我々の成し遂げたいことに共感してくれていることもあり、設立時から中高生とメンターの間のトラブルは一切ありません。
取引先からの要請を機に社内整備をする目的でPマークを取得
— 2020年5月からスタートして、2021年4月にPマークを取得されていますが、スケジュール通りですか。
LRMに依頼した時は、もう少し早いタイミングでの取得を考えていましたが、途中で予定を変更しました。
Pマーク取得を検討し始めた直接のきっかけは『Life is Tech! Lesson』の本格展開です。学校側は、国が進める事業の一環としてプログラミング教育のサービスを導入します。その際に、サービスを提供する企業がPマークを取得している必要があるということでしたので、弊社もできるだけ早く取得したいと考えていました。
ただ、Pマーク取得に取り組み始めた頃に、導入の条件が変わって、急いでPマークを取得する必要がなくなりました。ちょうど、社内体制も仕切り直す必要が出てきたため、プロジェクトを一旦止めて、8月に改めて準備を再開しました。
— Pマーク取得の目的は、『Life is Tech! Lesson』の導入を検討する学校側からのご要請ですか。
Pマーク取得のきっかけはそうです。ただ、創業以来、個人情報保護や情報セキュリティの領域に関しては、個々の裁量にまかせていましたので、会社としてリスクを軽減する取り組みはしたいと考えていました。
もちろん、個人情報の取り扱いが重要であることは誰もが認識していますし、各々が持っている知識の範囲では意識的に対応していました。しかし知識がない部分で抜けていたところや漏れはあったと思います。
そのような知識不足によって対応できていなかったところは、今回の取り組みで整備されました。
信頼できる知人から紹介を受けたLRMにサポートを依頼
— LRMにご依頼された経緯をお話しください。
Pマーク取得を進めるにあたり、どういうふうに進めていけば良いかわからなかったため、まずはコンサルティング会社の選定からスタートしました。LRMを含めて3社の話を聞いて、何をすべきか、おおよそ把握した上でLRMに依頼しました。
LRMは、過去にLRMのサポートを受けてPマークを取得した経験がある企業の取締役の方から、「すごく良いですよ」とご紹介いただきました。信頼できる方からのご紹介でしたので信頼感がありましたし、クレバーな印象もありました。
社内に浸透しやすいルールづくりが実現
— 8月に取り組みを再開してからは順調に進みましたか。
プロジェクト再開後はLRMに仕切っていただき、一気に進めました。
プロジェクトが止まっていた間も、台帳の作成は社内で進めていましたので、LRMと一緒にマニュアルの読み合わせをしながらPマークのルールを設計し、社内への周知の仕方を検討していきました。ルール設計とマニュアルの作成は、1ヶ月間で終わらせました。
–ご苦労はありませんでしたか。
ルールの検討に時間はかかりましたが、LRMのサポートがありましたので、苦労はしませんでした。
— ルール構築で意識されたことはございましたか。
単にPマークを取得するだけではなく、社内に浸透しやすいルールづくりを意識しました。
— 結果はいかがでしたか。
思い通りにできました。ルールづくりを進めるにあたって、LRMから教えていただいたことは、Pマークのポイントは何かあった時に原因を辿っていけることであるということです。その考えに沿ってルールづくりをしていきましたので、従業員にとっても腑に落ちないようなルールにはなっていませんし、社内への浸透もスムーズに出来ました。
取り組み以前は、Pマークの規格に合わせて色々と変えていかなければいけないというイメージを持っていました。しかしLRMと一緒に取り組みを進めるうちに、ごく当たり前のことがポリシーとして決まっているだけで、細かいルールは社内に合わせて作っていくことができるような印象を受けました。
また、Pマークのポリシーに沿って社内の状況を見てみますと、社内でどういう情報を扱っているか、セキュリティの観点からどう変えるべきか、明確に把握できるようになりました。何をすべきかが可視化され、具体的な対策を打つことができました。
— どのような対策を打ちましたか。
オフィス管理の仕方では、弊社の運用状況に合わせる形で、区画を整理しました。例えば受講生の中・高生やメンターの大学生が出入りする領域をオープンスペースという形の運用にした一方、業務に関わる重要な書類を保管するスペースを決めて、入退室管理を行うことにしました。入退室管理は、現場に負担がかからない設計にしたかったため、LRMとディスカッションした上で、紙で管理するのではなく、スマートロックの仕組みで行うようにしました。
また、全社に管理ツールを導入しました。これまでもパスワードを使いまわししないということは常識的に行ってきましたが、管理方法は個人に任せていました。エンジニアの多くは使っていたようですが、何を使うかは統一されていませんでした。管理ツールを使っていなかった人は、いちいち覚えていなければいけませんので、入力時にストレスを感じていました。またツールを全社に導入するなら統一した方が管理は楽になります。
様々なツールがある中から、メリット、デメリットを総合的に検証し、LRMの意見も参考にして『Dashlane』に決めました。
この他、PCにスクリーンセーバーを設定することや情報整理の区分などもルール化しました。
— 不本意なルールはありませんでしたか。
ありません。ルールを検討する際には、そのルールがなぜ必要なのかを教えていただいた上で、その目的を満たすにはどうすれば良いかを弊社の実態に合わせて決めていきました。打ち合わせの中でポイントを押さえたアドバイスをいただきながらディスカッションできましたので非常にやりやすかったです。
— 社内への浸透はどのように実施されたのですか。
LRMと一緒に作成した従業員向けのハンドブックをベースにしたスライドを活用し、「なぜPマークを取るのか」「そもそも個人情報とは何か」「どのようなインシデントがあるのか」などPマークの基本をレクチャーするとともに、従業員全員で守るべきルールを周知しました。
もともと弊社の従業員は、会社の事業やミッションに共感してジョインしています。そのため目的に立脚して丁寧に説明さえすれば抵抗なく受け入れてもらえます。『Dashlane』の導入も、動画を用いて使い方を紹介したら便利さを実感したようで、全員すぐに設定していました。わかりやすく伝えることを意識して取り組んだことで、従業員への周知・浸透もスムーズに行きました。
— みなさんの行動に変化はありましたか。
個人情報を取り扱う際に、一歩立ち止まって注意している様子は感じられます。個人情報を取得する必要が生じた際、事務局に「こういうやり方でいいですか」と問い合わせが来るようになりました。Pマーク取得が、改めて個人情報の扱い方を考えるきっかけになりました。
専門家の視点で内部監査を実施。審査に向けた準備ができた
— 従業員教育はスライドや動画を活用した全体研修だけですか。
いいえ。別途、LRMが提供するセキュリティ教育クラウド『セキュリオ』を活用して、テストを受けました。
— 御社の場合、ご自身たちで教材を作ることもできますよね。eラーニングサービスを活用するメリットはございましたか。
今回は初回ということもあり、基本を押さえるため『セキュリオ』にアップされているPマークの教材を使用しました。今後、細部を掘り下げた内容にしたり、部署ごとに学ぶべき内容が変わったりすることがあるかもしれません。その時は自社で作成するケースもあると思います。
— 『セキュリオ』を使われてみていかがでしたか。
管理者側にとっても、ユーザー側にとっても、特にマイナス要因は見当たりませんでした。
eラーニングの機能そのものもシンプルで使いやすかったですし、実施記録として使えるため審査時も楽でした。また、弊社は社内で『Google Workspace』を利用していますが、GoogleとSAML連携することでアカウント設定も楽にできました。eラーニング以外に、委託先アンケート、最新法令管理などの機能も使えたため、コストカットにもなりました。
— eラーニングは社員の方々だけを対象に実施されたのですか。
はい。審査員からは、大学生のメンターにも実施すべきという指摘を受けましたので、次の更新に向けた課題としてリストアップしています。ただメンターは400名いますので、『セキュリオ』へのアカウント登録が大変なので別の方法を検討しています。
— 内部監査も監査員代行はご利用になりましたか。
はい。三崎さんに内部監査員を代行していただきました。
— 内部監査員代行サービスのメリットをお話しください。
社内の人間が実施するより、現場の社員に緊張感が生まれて良いと思います。また、専門家の視点で様々なご指摘をいただいたことで、審査に向けた準備ができました。非常に役に立ちました。
— 審査はいかがでしたか。
現地審査では致命的な指摘をいただきませんでしたので、終わって安心しました。もちろん細かい指摘はいくつかありましたが、いずれも納得できる内容で、その場で修正した箇所も少なくありませんでした。
『Slack』での相談+2回の訪問。『情報セキュリティ倶楽部』を契約
— Pマーク取得に取り組まれたご感想をお話しください。
理解できていないところから取り組みを始め、Pマークの基本的な方針を通してやるべきことが見えるにつれ、社内の仕組みを整備することができました。ISMSだと守る範囲が広がるところがありますので、社員のセキュリティ意識を高める最初のステップとしてPマーク取得に取り組めたことは良かったように感じています。
— 今後の展望をお話しください。
事業拡大に伴いリスクは増えていくはずですので、それに合わせて社内の仕組みを整備していきたいと考えています。
— LRMのコンサルティングを受けたご感想をお話しください。
ルールを決める上で、Pマークの規格上変えてはいけないところと、会社に合わせて変えていいところが非常に明確だったためやりやすかったです。
— 打ち合わせはオンラインで実施されていたのですか。
Pマーク取得の準備期間中はずっとコロナ禍の中でしたので毎回『Zoom』を使ったオンラインミーティングで実施しました。打ち合わせの日時を決める際や、社内で作業を進める際にわからないことがあった時は、『Slack』で連絡を取り合いました。
— 『Slack』でのやりとりでもストレスを感じることはございませんでしたか。
ありませんでした。レスポンスも速いですし、的確にご回答いただけるため頼りになりました。
— 取得後は何らかの形でサポート契約をされているのですか。
Pマークの運用改善サポート『情報セキュリティ倶楽部』を契約しています。『Slack』で相談する他にオンライン面談を年2回実施していただく契約です。1回は内部監査員代行をお願いする予定です。
また、今後は審査でいただいた指摘事項への対応や、万が一インシデントがあった場合の対応など、ご相談させていただきたいと考えています。
ライフイズテック株式会社様、お忙しい中ありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
※ ライフイズテック株式会社のWEBサイト
※ 取材日時 2021年8月