リモートワークに必要な就業ルールとは?変更手順についても解説

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リモートワークの実施に際しては就業ルールの変更が必要になる場合が多く見られます。就業ルールには様々なものがあり、会社の基本的な労務に関する規則である「就業規則」、遵守することが従業員に求められる「服務規程」、あるいは業務の手順をルール化した「業務規程」ないし「マニュアル」などです。

リモートワークには、

  1. 会社の労務関係の基本規則である就業規則を変更しなければならない場合
  2. 諸々の服務規定ないし業務規程を変更しなければならない場合
  3. あるいはまったく文書化したルールは変更しない範囲でリモートワークを実施する場合

があり、実はルールの変更は必須ではありません。

どんな場合に、就業規則を変更することが必須となるか、具体的なケースについてご説明すると同時に、諸々の服務規程等のルールの変更がどういう場合にあった方がよいのか、ルールを変更しないリモートワークの場合、どんな点が不自由になることが想定されるか、具体的にご説明します。

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リモートワーク実施に就業ルール変更は必須ではない

リモートワークを実施するのに、就業ルールの変更は必須ではありません。

例えば、すでに就業規則でフレックスタイムが導入され、自宅からの労務提供も認められており、働き方がそもそも柔軟である場合、あるいは、会社が費用を全額負担できるリモート環境で仕事をする場合などは、就業規則の変更を検討しなくてもよいでしょう。

しかし、次のような場合には、就業ルールの中でも基本の規則である就業規則の変更を検討する必要があります。

就業規則の変更が必要な場合
  • 従業員が通信費・リモートワークに必要な備品などを購入する必要がある場合で、従業員負担分が発生する場合
  • 労務提供を自宅やコワーキングスペースから行うことを許していない就業規則の場合
  • あらたにフレックスタイムを導入する必要が生じた など

特に費用に関しては、労働基準法上の給与全額現金支給の原則に触れる恐れも考えられることから、就業規則を変更し、この原則には触れないことを規則上も確認できるようにする必要があります。

就業規則については、労働基準法の手順に則り、労働基準監督署に届出をすることが必要になりますので、従業員代表からの意見聴取など、届出のための準備もしておきましょう。フレックスタイムの導入には労使協定も必要です。

その他、ルールの変更は必須ではないとはいえ、よりリモートワークの実際に合った服務規程をつくりたい場合や、あるいは服務規程上セキュリティに関してリモートワーク上生じうるリスクに合った規定にしたいなど、必須ではないルール変更をすることがあります。

リモートワークにおける就業ルール変更にあたって

リモートワークの影響により、通勤手当の支給方法を変更する場合、あるいは支給基準の変更を伴う場合も就業規則の変更が必要です。就業規則とは別で賃金規定を持っている場合、その変更が必要になる場合もあり、手続きは就業規則の変更に準じて行います。

なお、緊急テレワークを実施する際に、就業規則の範囲をこえたり、より詳細なルールを周知したい場合などは、労働契約に追加の覚書を交わして補完することも可能です。

リモートワークにおける課題

ところで、リモートワークにはまだ課題が多く、すでに開始している場合には課題の解決が求められ、あるいはこれから開始する場合、準備活動の中で対策を行っておくべきこともあります。

例えば、総務省の発行する「令和2年度版 情報通信白書」によると、リモートワークの課題として認識されていることで、上位を占めているものは以下の通りです。

リモートワークにおける課題
  • 紙ベースであり、出社して参照しなければならない資料やデータなどがあった
  • 同僚や上司などとの連絡・意思疎通に苦労した
  • 会社のテレワーク制度が明確ではないため、やりづらかった
  • 営業・取引先などとの連絡・意思疎通に苦労した
  • 自宅に仕事に専念できる物理的環境がなく、仕事に集中できなかった
  • 自宅で仕事に専念できる状況になく、仕事に集中できなかった
  • セキュリティ対策に不安があった

ルール変更が行われないまたは不十分である場合、何をやってよくて何をやってはいけないのかがわかりにくいという状況や、セキュリティ対策におけるリモートワーク用の対策ができていないという事実が、リモートワークの不安となったのではないか、と推測されます。

リモートワークの就業ルール変更をするかしないか、またどんな事項について変更をするかについては、これらの課題を踏まえて検討する必要があります。

リモートワークにおいて見直す就業ルールのポイント

先ほどご紹介したリモートワークの課題から、検討してみると、見直すポイントは下記の通りにまとめられます。

情報の管理見直し

情報の管理の形態の見直しを電子化を中心として行うようにします。電子印鑑・電子サインの導入なども併せて行い、出社しなければできない仕事を減らすようにしないとリモートワークは生産性が低くなってしまいます。例えば、資料や、押印を電子化しないと、取引先との連絡や契約締結にも出社が必要になりますが、これはリモートワークの生産性を阻害します。

そこで、次のような点をルールの見直しのポイントとしましょう。

  • 資料は必ず電子化するよう徹底する。業務規程・マニュアルへの折り込みや、服務規程での紙ベースの資料の利用制限などを見直しの検討対象とする。
  • 押印などの物理的作業も電子作業へ変える。業務規程への折り込みを検討する。

連絡体制の見直し

リモートワークでも極力連絡ができるようにするために、連絡体制の見直し、これに関連する業務規程・マニュアルについても見直しをしてみましょう。

  • メールだけではなくWeb会議ツールなどでの定期的な連絡を義務づける
  • 職種によっては、日報提出をルール化する
  • 取引先とのやり取りも、極力Web会議ツールを通して実施する

自宅の環境整備にあたっての費用取り扱い

自宅においては、オフィスと同程度に、長時間の作業が行われても、対応できる環境を整えてもらう必要があります。費用負担を従業員が行う場合は、就業規則の変更が必要になる可能性があることすでにご説明した通りです。

環境整備に必須とは言えないものでも、導入したほうがより業務が円滑に進められるものなどについては、導入を奨励する、あるいは会社で購入しておいて貸し出すなどの方法もあります。会社の全額負担とする・半額負担とする、あるいは奨励金・補助金などを支給するなど、ルールについても決めておきましょう

費用負担が問題になるものの例
インターネット環境、半個室環境、作業用の机やいすなど。ただし、別途コワーキングスペースを会社で契約する方法なども可能。

柔軟な労働時間

労働時間はリモートワークの場合、生活の場と直結していることも多いこと、また、子育て・介護などのケア責任との両立がしやすいことから、柔軟に設定することが実態に即していますし、リモートワークの生産性を上げます。

また、管理者の技量によって、働きやすさ・働きにくさが左右され、不平等も懸念されることから、次のような労働時間・働き方に関するルールを設定することを検討しましょう。フレックスタイムの導入には、就業規則の変更・労使協定の締結が必要になること先ほども触れた通りです。

  • フレックスタイム制の導入(従来型のフレックスタイム、フルフレックスなどタイプ別についても決めておくこと)。
  • 職務上支障がなければ、仕事中に退席して私用に対応することも問題なしとすることの明文での規定

評価制度の見直し

リモートワークは働く人に自己管理を任せ、裁量の余地を大きくします。働き方のプロセスが見えにくくなる面もあるので、何で評価するかが問題になりますが、成果主義型に働き方が自然と変わっていく様子が見受けられます。よりリモートワークに合った評価制度に変更し、リモートワークでの生産性を上げることが多くの会社にとって課題です。

フレックスタイムなどの柔軟な労働時間を導入すると同時に、次のような内容を盛り込ませるか、評価制度・評価ルールの変更を検討してみましょう。

  • 労働時間の長短ではなく、成果を評価する方法に変更
  • 所定の労働時間に対応していなくても、成果があがっていれば問題なしとする

複数の労働場所

会社や自宅以外にも、サテライトオフィスや、コワーキングスペースを確保することの要否、オフィス以外の拠点からの労務提供に支障がないルールになっているか、就業規則を始め、各ルールを点検してみましょう。

自宅に環境を整えにくい人も一定数以上いる中、環境を自宅に作らせることはコストが割高になる傾向もあります。自宅以外で業務をできない人が、カフェなどから業務を行い、セキュリティ上の問題になるケースも見られますので、リスク管理上も検討課題です。

コスト・セキュリティ面のほか、ルールの変更を検討するうえでは、次のようなポイントをチェックしておきましょう。

  • リモートワーク用の勤務場所をどこに設置すべき(サテライトオフィス・コワーキングスペース、あるいは支店等の他のオフィス拠点はどうかなど)
  • 設置する場合、どういう場合に、どこで勤務できるかルールの明確化(普段の勤務地以外のオフィスも柔軟に使用できるようにするなども検討課題)

セキュリティ面の強化

外部からの会社のネットワークへのアクセスを許すリモートワークにおいては、通信環境や、インフラ、そしてセキュリティ関連の服務規定を強化する必要が生じます。服務規程の強化とともに、ツール導入など技術的な措置も同時に施しましょう。

  • マルウェア感染・通信傍受の防止などの趣旨から、VPNなど指定された通信環境を従業員に使用させるようにルールで徹底する
  • 不特定多数の人が集まる場所での業務禁止・社外でのプリンタ使用禁止ルールの強化など
  • シャドーITの検知ツールなどの導入と、ルール上の禁止の徹底など

まとめ

以上の通り、リモートワークの実施にルール変更は必須とはいえないものの、一定の場合は就業規則の変更が必要であること、また、リモートワークでも通常勤務時と同等かそれ以上の生産性・成果を上げるには、ルールの変更が必要になることご理解いただけたことと思います。

すべてのルールを変えることを一気に行うのも実際には難しい面があるのでこれからの導入や、実施拡大においては、セキュリティ等大きなリスクを回避するためのルール・就業規則の変更が必須になるものから優先順位をつけて検討・実施されることをおすすめします。

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情報セキュリティ対策組織体制・ルールの構築
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