ビジネスで取り扱われる文書には、内容が適切かどうか確認したことを承認するための、承認欄が設けられていることがあります。この承認欄には、承認者の印鑑が押印されることが多いのですが、これが業務の効率を低下させているという声もあります。
押印ができるということは、その文書が紙であることです。これがペーパーレス化を阻害し、押印のための出社を強制しているという現実があるからです。
文書の承認には、本当に押印が必要なのでしょうか?
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多くの企業では未だ承認の印として印鑑が使われている
ISMSを構築して実際に運用が始まると様々な活動の記録が出てきます。その中には、記録として保管しておかなければいけないものもあります。例えばリスクアセスメントの結果であったり、内部監査の結果であったりと。
それらの記録には「承認」欄が授けられている場合が多いです。この「承認」欄は、記録を取るだけでなく、内容が適切であるかどうかについて、管理者であったり社長であったりという承認者が「これでOKだよ」という意思を示すために設けられています。
そして、多くの企業で、この承認の印として印鑑を使っています。実際の記録の用紙に確認印欄を作っておいて、そこに印鑑を押せば良いので運用としてはシンプルですし、実用的です。ただ、必ずしも印鑑がなければいけないと言う訳ではありません。
承認印鑑を使わなくても承認したことがわかればOK
承認者自身がサインをしても良いですし、そもそもとして紙でなく電子データとして記録管理をする場合は印鑑自体が押せません。そのような電子データに承認する場合は、電子印鑑が使用されることが多いのですが、実際には承認の仕方も色々あります。
もっと簡単にお金を使わない方法としては、例えば承認者が「承認したよ」というメールを出すことでもOKです。社内で使っているワークフローシステムがあるのであれば、そのシステムにのせるのでも良いと思います。
要は、大事なことは「必ず承認者が内容を確認すること」です。そのためには、別に印鑑でも、システムでも、メールでも承認の仕方は何でもOKです。
必ず印鑑で承認しなければいけないと思って紙での記録管理をしている場合は、電子データでの管理を含めて運用方法を見直してみるのも良いかもしれません。ペーパーレス化を進めて、電子データに対する承認方法を進めれば、業務効率の改善にもつながるでしょう。
ISO9001でも承認印鑑が必須との記載はない
品質マネジメントシステムであるISO9001でも、文書管理承認のプロセスにおいて、特に印鑑の押印が必要である旨の記載はありません。
要求事項「7.5文書化した情報」の「7.5.2 作成及び更新」に承認の文言がありますが、これは以下のような内容です。
文書化した情報を作成及び更新する際は、次の事項を行う。
a) 適切な識別及び記述(例えば、タイトル、日付、作成者、参照番号)
b) 適切な形式(例えば、言語、ソフトウェアの版、図表)及び媒体(例えば、紙、電子媒体)
c) 適切性及び妥当性に関する適切なレビュー及び承認
承認に関する言及はc)ですが、承認プロセスに対する直接の言及はありません。少なくとも、承認印鑑が必須であると解釈することはできないでしょう。適切性と妥当性を承認できれば、手段は何でも良さそうです。
承認印鑑の代わりになるワークフローシステムとは
承認印鑑が不要とはいえ、何らかの文書を承認するためには、それなりの手続きが必要であることは変わりません。それを担うのがワークフローシステムです。
ワークフローシステムとは、申請・確認、また承認・却下をシステム上で完結できるものです。申請の種類に合わせた書類・承認者・承認のルートを設定しておき、対象の申請が発生したら自動的に承認までのフローが実行されます。
申請者は設定された書類のフォームに必要事項を記入し、ボタンを押すだけで申請作業が済み、フローによって、決められた承認者のもとに通知が届いて、システム上で内容を確認できます。承認者は、その内容に問題がなければ承認ボタンを押して承認を完了させます。1人の承認者が承認したら、次の承認者が承認して、この承認のフローは鎖のようにつながっていき、最後の承認者が承認をすれば、そのワークフローは完了です。
このワークフローシステムでは、「ログイン」していること自体が、本人であることを証明します。つまり、「なりすまし」の心配が基本的になく、本人確認をする必要がありません。
さらにワークフローは、権限のない人は申請データを参照できず、勝手に承認や改善を行うことができない仕組みになっています。つまり、ワークフローシステムでの承認は、承認印鑑の役割を担っていると言えるでしょう。
承認印鑑以外のワークフローのメリットとは
昨今のコロナ禍で急速に普及が進むテレワーク環境においてもワークフローは効果を発揮します。なぜならワークフローのシステムがインターネット上にあり、そのシステムにアクセスできれば、離れた場所にいても承認作業は可能だからです。つまり承認者が会社にいなくても承認できるのが最大のメリットです。
ワークフローシステムはステータスを確認できるので、どこで承認が滞っているか一目でわかる。承認を急ぐ場合には対象者に個別に連絡するなどで対処可能です。しかも、システム上で完結するため、申請書類の保管場所に困ることもなく、また、申請者が過去の申請書類をシステム上で検索・参照できるというメリットもあります。
さらにワークフローの承認ルートを予め登録しておけば、新規で申請する時に、登録されている承認ルートを選択して申請できるため、ルートの選択さえ適切にできていれば、次に誰が承認するべきかなどを、いちいち確認せずに済みます。
承認印鑑を代替できる電子署名
非常に便利なワークフローシステムですが、社内の業務の関係上、すぐにワークフローシステムを導入できない場合もあります。その場合、取り急ぎテレワークなどに対応させるには電子印鑑の導入がおすすめです。
一方、電子文書が正式なものであり、かつ改ざんされていないと証明するものとして、電子署名があります。電子署名には法的効力があり、契約書や発注書といった重要書類で活用されるケースが増えてきています。電子署名が施された電子ファイルはそのハッシュ値と呼ばれる復元不可能なデータを取得することにより、文書改ざんの有無や変更内容自体を目視で確認できます。
テレワークが普及した現在でも、押印のためだけに出社しているという話をよく聞きます。しかし電子署名による契約が普及すれば、自宅にいながら企業間の重要な契約にサインができるようになります。そのため電子署名による契約は、今後も普及していくと考えられるでしょう。
まとめ
文書の承認には、必ずしも押印が必要なわけではないことを紹介しました。承認者が内容を確認できたことを証明できれば、印鑑でもワークフローシステムでも、メールでも何でもいいわけです。もし自社において、紙の文書の承認に押印をする風習があるのでしたら、この機会に電子データによる管理を含めて、運用方法を見直してみるのもよいかもしれません。
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