消費者の好みや興味、購買履歴を分析して、消費者に最適化されたサービスや商品を提供するために利用されるのが、パーソナルデータです。個人情報と似た概念ですが、パーソナルデータと個人情報は少し異なる概念です。
この記事では、パーソナルデータの概要と活用するメリット及び注意点などについて詳しく解説します。
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パーソナルデータとは
パーソナルデータとは、個人を識別できる個人情報に限らず、個人の属性や移動・行動履歴、ウェアラブル端末から収集した情報など個人に関するさまざまな情報を指す言葉です。
平成29年版情報通信白書によると、パーソナルデータは以下のように定義されています。
法律で明確に定義されている個人情報に加え、個人情報との境界があいまいなものを含む、個人と関係性が見出される広範囲の情報(個人の 属性情報、移動・行動・購買履歴、ウェアラブル機器からのデータなど個人情報を含むものや、特定の個人を識別できないように加工された 人流情報、商品情報等が含まれる)
平成29年版情報通信白書
具体的には、スマートフォンで取得した個人の位置情報やIPアドレス、ネットショップでの購買履歴、インターネットの閲覧履歴などです。これらは個人情報には該当しませんが、特定の個人の属性を表している情報です。
パーソナルデータとは、個人情報を含めた個人に関する情報全体を表している概念といえるでしょう。
パーソナルデータと個人情報の違い
さきほども解説したように、パーソナルデータは個人情報を含む個人に関する情報全体を指す言葉です。それでは個人情報とは具体的にはどのような情報なのでしょうか。
改正個人情報保護法では、個人情報を以下のように定義しています。
この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一. 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。第十八条第二項において同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
二. 個人識別符号が含まれるもの
また、ここで出てきた個人識別符号とは、以下のように定義されています。
個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ、又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され、若しくは電磁的方法により記録された文字、番号、記号その他の符号であって、その利用者若しくは購入者又は発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ、又は記載され、若しくは記録されることにより、特定の利用者若しくは購入者又は発行を受ける者を識別することができるもの
これはたとえば、マイナンバーカード番号や運転免許証番号、基礎年金番号などが該当します。
個人情報の特徴は、その情報が特定の個人を特定できることです。
たとえば、氏名・生年月日・住所などが個人情報に該当します。ただし、個人情報とは氏名や生年月日が含まれている情報全体が個人情報として取り扱われます。
つまりそれらの情報全体から、氏名や生年月日を取り除いても、残された情報から個人が特定できれば、その情報は個人情報ということになります。
パーソナルデータを活用するメリット
パーソナルデータを活用する最大のメリットがパーソナライゼーションです。これは一口で言うと、特定の個人に最適化した情報や商品を提供する仕組みです。
たとえば、インターネットの閲覧履歴から個人の好みや興味を分析して、その人に最適な広告を表示させる手法があります。これは現在のマーケティングでは当たり前のように導入されている技術であり、大手のECサイトなどで利用されているものです。このようにパーソナルデータを活用することで、その個人が検索することなく、その個人にあった情報を提供させることができるようになりました。
ただし、このようにパーソナルデータを活用するためには、活用する企業と個人との間に信頼関係が構築されていることが重要です。そのためには、パーソナルデータを活用していることを消費者に対してきちんと説明して理解を得られる必要があります。
パーソナルデータを活用する際の注意点
パーソナルデータはさまざまな企業で活用が進んでいますが、個人に関する情報であることから、プライバシーやセキュリティの面で慎重な取り扱いが必要とされています。2022年現在においても、パーソナルデータの取り扱いに関するルールが整備されているわけでもなく、取り扱い方において検討の余地があります。
パーソナルデータの中でも個人情報にあたる情報は、明確に定義されており慎重に取り扱われていますが、個人情報を加工し個人情報を復元できなくした匿名加工情報については、それ自体では個人の識別は不可能であることから軽視されがちです。
このような個人の識別が不可能である情報であっても、その取り扱いのルールには気を払う必要があるでしょう。
特に、取得したパーソナルデータが二次利用・三次利用される場合、複数のパーソナルデータの蓄積により、個人が特定される識別性が発生する可能性があります。そのため二次利用・三次利用においても、パーソナルデータの提供者からの同意を得て利用するなど、適切な取り扱いが必要となります。
パーソナルデータの活用事例
パーソナルデータの活用事例としては、以下のようなものがあります。
- インターネット上で提供する情報をユーザー別にカスタマイズする
- ニュースアプリで配信される記事を最適化する
- 消費者が自身の個人情報を提供し、その情報を別の事業者に提供する情報銀行
- スマートフォンの位置情報を人口統計デーとして活用
- 消費者の健康データやライフログを健康増進プログラムに活用
- 医療機関の処方データを使い薬剤の効用や副作用を分析して製薬会社へ提供
- 不動産開発事業者が発行したポイントカードにより消費者の利用履歴を収集しSNSのキャンペーンに活用
- 住宅事業者が契約住宅から取得したHEMSデータを匿名加工し消費電力の予測等の分析に活用
またNTTドコモでは、「パーソナルデータ憲章」というパーソナルデータを適正に取り扱うための以下の6つの行動原則を発表しています。
- お客さまとのコミュニケーションを大切にし、透明性を確保します
- お客さまの利益や社会への貢献を考えます
- お客さま一人ひとりの意思を尊重します
- パートナーとの連携にあたってもお客さまのプライバシーに配慮します
- 適切なセキュリティ対策により、お客さまのパーソナルデータを保護します
- お客さまのプライバシー保護のための体制を整備し、運用します
パーソナルデータが活用される場面や企業は、これからもますます増加していくことが期待されます。それにともない、NTTドコモのパーソナルデータ憲章のような、企業独自のパーソナルデータの取り扱いのルールを設ける企業も増加していくと思われます。
まとめ
パーソナルデータの活用は消費者に大きなメリットをもたらしますが、その一方でプライバシーの保護という重要な課題もあります。そのため、パーソナルデータの取得と活用においては、消費者からの理解を得ることが必要です。そのうえで企業と消費者の双方にメリットがもたらされるような仕組みを構築しなければなりません。
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